トラペジウム『トラペジウム』をめぐる小さな奇跡 高校1年生の東ゆうは「絶対にアイドルになる」ため、己に4箇条を課して高校生活を送るが――。アイドルを目指すある女の子を描いた感動の青春小説!
都内の小さな古本屋「星屑堂」。この店には不思議な噂があった。
「運命の本に出会える場所」
ある日、高校生の玲奈は店の前で足を止めた。最近、心がざわついていた。夢を持つことの意味を考え始めていたのだ。
店内に足を踏み入れると、棚の隅で一冊の本が目に留まった。『トラペジウム』。表紙の女の子がどこか自分に似ている気がした。
「いい本だよ」
店主の老人が微笑む。玲奈は試しにページをめくる。主人公・東ゆうは「アイドルになる」という夢のため、計画的に高校生活を送る少女だった。その姿はまるで星を目指す航海士のようで、玲奈の胸を強く打った。
「夢って、どこまで計算して叶えられるんだろう?」
家に帰り、夢中で読み進めるうちに、玲奈の心に小さな炎が灯った。目標を持ち、努力し、仲間と出会いながら進む東ゆうの姿に、自分を重ねる。玲奈もまた、やりたいことがあるのに踏み出せずにいたのだ。
読み終えたとき、玲奈は決心した。「私も動き出そう」。
翌日、玲奈は古本屋へ向かった。「この本、誰かに薦めたくて……」。すると店主は優しく微笑み、本棚の奥を指さした。そこにはまた一冊の『トラペジウム』が置かれていた。
「この店ではね、大切な本はまた誰かのもとへ行くんだよ」
玲奈は驚きながらも、本をそっと棚に戻す。そして、その本がまた誰かの背中を押すことを願った。
小さな古本屋で生まれた、一冊の本がつなぐ奇跡。
それは、星座のように輝く夢の物語だった。