「多動脳:ADHDの真実」- 衝動性、不注意、多動の奥にあるもの。当事者と社会を結ぶ、理解と共感のための必読書

新潮新書の一冊として刊行された「多動脳:ADHDの真実」は、依然として誤解や偏見が多い発達障害の一つ、注意欠陥・多動性障害(ADHD)について、その本質に迫り、社会における理解を深めることを目指した書籍です。単に症状を解説するだけでなく、ADHDを持つ人々の内面や、彼らが抱える生きづらさ、そしてその才能や可能性までをも掘り下げて紹介しています。

本書では、ADHDの主要な特徴である、不注意(集中力の持続困難、忘れっぽさなど)、多動性(落ち着きのなさ、じっとしていられないなど)、衝動性(考えずに行動してしまう、順番を守れないなど)といった症状が、具体的なエピソードを交えながら分かりやすく解説されています。これにより、これまでADHDに対して漠然としたイメージしか持っていなかった読者も、その特性をより深く理解することができるでしょう。

また、本書が特筆すべき点は、ADHDを単なる「障害」として捉えるのではなく、「多動脳」というキーワードを用いることで、その特性を個性として捉え直す視点を提示していることです。ADHDを持つ人々の中には、その特性を活かして、ユニークな発想力や行動力、高い集中力を発揮し、社会で活躍している人も少なくありません。本書では、そうしたADHDのポジティブな側面にも光を当て、読者の認識をアップデートすることを試みています。

さらに、本書は、ADHDを持つ当事者だけでなく、その家族や友人、教育関係者、医療従事者など、ADHDに関わる全ての人にとって有益な情報を提供しています。診断のプロセスや、日常生活における具体的な工夫、周囲の理解とサポートの重要性など、実践的なアドバイスが満載です。特に、ADHDを持つ子供への接し方や、学校や職場における合理的配慮など、具体的な支援方法についても詳しく解説されており、関係者がより良い関わり方を模索する上で、貴重な指針となるでしょう。

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新潮社
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著者は、最新の研究に基づいた科学的な知見を紹介しながらも、専門用語を避け、平易な言葉で解説することを心がけています。そのため、専門知識がない読者でも、ストレスなく読み進めることができます。また、ADHDに関するよくある誤解や疑問にも丁寧に答えており、読者の不安や疑問を解消する手助けとなるでしょう。

「多動脳:ADHDの真実」は、ADHDについて正しく理解し、ADHDを持つ人々がより生きやすい社会を築くために、私たち一人ひとりが知っておくべき知識と視点を与えてくれる一冊です。ADHDに関心のある全ての方に、ぜひ手に取っていただきたい書籍と言えるでしょう。

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