謎のロシア人っぽい異形な生物と浪人生の家族が繰り広げる異色で温かな日常を描き多方面で絶賛されるクジマ歌えば家ほろろ5巻は奇妙な居居心地の良さが心に染み渡る注目作です。ゲッサンが贈る笑いと郷愁が交差するシュール生活劇の金字塔です。

風が冷たさを増す季節の道端で腹をすかせた謎の生き物がポツリと佇んでいます。紺野アキラが描く独自の空気感と優しい眼差しで多くの漫画賞を受賞し高い評価を獲得してきたクジマ歌えば家ほろろ5巻は物語が新たな局面へと差し掛かる待望の最新刊です。奇妙な居候との出会いから始まった鴻田家の日常は今やかけがえのない温もりに包まれています。
鳥のようなロシア人のような不思議な存在であるクジマと受験勉強に身をやつす浪人生の新平。噛み合わない会話や唐突な行動に困惑しながらもいつの間にか当たり前のように食卓を囲む関係性が丁寧に描かれています。シュールなギャグの裏側に漂うどこか甘酸っぱく切ない情感は読む者の心を静かに捉え深い余韻を残します。
ゲッサン少年サンデーコミックスならではの澄んだタッチと緻密な生活描写によって昭和の面影を残す家屋の佇まいや料理の匂いまで画面越しに届いてきそうな完成度を誇ります。登場人物たちの何気ない視線の交わし合いや沈黙の間まで計算し尽くされた表現力が作品全体のクオリティを押し上げています。
物語は季節の移ろいとともに受験という期限つきの現実と向き合う家族のドラマを軸に展開していきます。いつかは訪れるかもしれない別れの予感を抱えながらも目の前の一杯の温かいスープや家族で囲む食卓の愛おしさが丁寧に重ねられていきます。不器用な人々が寄せ合いながら暮らす姿は優しく心にしみ込んできます。
単なるユーモア漫画の枠組みを超えて家族のあり方やかけがえのない時間を描いたホームドラマとして非常に高い完成度を誇ります。多忙な日々に追われる大人たちへ穏やかな癒やしとささやかな勇気を与えてくれる本作は漫画ファンならずとも手元に置いて何度でも読み返したくなる永久保存版です。奇跡のような日常の愛おしさを余すところなく味わえる傑作です。



























